特別助教からのメッセージ

~ これまでのテーマを深めながら 新たな研究の種をまく ~

創成研究機構・教育学研究院
研究分野: 家族社会学、ジェンダー社会学
アンビシャス特別助教 / 2022年度採用
孫 詩彧

学生時代からのネットワークを活かすため特別助教として再び北大へ

北海道大学 大学院教育学院で2020年に博士号を取得したあと、名古屋大学の男女共同参画センターGRL(現在、ジェンダーダイバシティセンター)で研究員をしていました。その期間中も専門研究員として北大の大学院教育学研究院に在籍しており、学内のメーリングリストでアンビシャス特別助教の公募を知って応募しました。


(2022年5月撮影)

私が修士の頃から取り組んでいる、家事育児の分担と遂行に関する研究は、同じカップルの夫と妻の両方にインタビューを行うことが特徴です。調査への協力者を探すのが実は大変ですが、北海道の各保育施設から多くの協力をいただいております。このネットワークを生かし、学生時代から関係を築いてきたカップルの追跡調査もできる北大でポストを得て研究ができることは大きな魅力でした。

 

研究にフォーカスできる2年間社会課題を解決するプロジェクトにも参加

特別助教の任期である2年間は、博士課程修了後すぐに獲得した科研費の研究プロジェクト「家事分担をめぐる調整:未就学の第1子を持つ夫妻のペアデータを用いた実証研究」を進めるために有効に使いたいです。本制度は研究エフォートが高いので、集中して研究に取り組むことができ、その分、実際に成果も出しやすいと感じます。

他にも、ジェンダーと貧困研究の一環として、世界的に問題となっている「生理の貧困問題」の解決策を探り、生理用品が一般配布しうるように、社会構造とテクニカル(配布用設備など)の面から議論を深めていきたいです。私の関心は特に、男女別のトイレや多目的・オールジェンダートイレなどが表すように、空間のデザインとジェンダー問題のつながりにあります。任期中はこういう新たなテーマにも踏み込んでいきたいですね。

 

大学の後押しを受けて新たな研究フィールドを開拓

私はこれまで日本、中国など東アジアにフォーカスして研究してきましたが、L-Stationの後押しもあり、支援制度を利用してオーストラリアで研究のトライアルができました。今、アジアからオーストラリアに移住する人が増えていて、オーストラリアの中でコミュニティが作られています。欧米の影響を強く受けているオーストラリアの制度の中で暮らすうちに、日本や中国からの移住者たちのジェンダーや家庭内の役割分担に関する考え方がどう変化していくのかという、興味深い研究テーマを見出すことができました。現地に行って気づくことがたくさんあったので、トライアルのチャンスを与えてくれた大学に感謝しています。

 

さまざまな種をまいた初年度どんな花が咲くか楽しみです

この1年間は今後の研究のための種まき期間ととらえて、他大学の研究者とつながりを作ることも意識的に行なってきました。今後、新しい研究や連携という形で花咲くことを期待しています。さまざまな部局に所属する他の特別助教の皆さんと仕事をしたり企画を考えたりする機会もあり、違う分野の人たちの研究の進め方や考え方の違いに触れた経験は、異分野と連携する時のためにとても重要だと思っています。

私の研究分野は、今現在起きている問題を検討することが多いので、リアルタイムで社会に還元していきたいという思いもあります。来年度は、学生への教育や、市民向けのプログラムを設計するようなスキルも身につけていきたいですね。