特別助教からのメッセージ

~ 異分野交流の実践を キャリアアップの土台に ~

創成研究機構・理学研究院 化学部門
研究分野: 計算化学
アンビシャス特別助教 / 2022年度採用
堤 拓朗

オリジナルの解析法で新たな化学反応理論を開拓

計算化学は、物質の性質や化学反応が起こる様子をコンピュータでシミュレーションして調べる学問分野です。私は、博士課程の研究で、「反応空間投影法(ReSPer)」という反応解析理論を開発しました。これは、実際の化学反応における分子の複雑な動きを、最小エネルギー反応経路ネットワークに基づいて解析できる方法で、これまで主に情報科学の分野で使われていた手法を計算化学に取り入れることで実現したものです。開発した反応空間投影法が実際の化学反応にどう適用できるかを検討するため、学位取得後も博士研究員として研究室に残って研究を続けていました。


(2022年5月撮影)

 

次のステップに向けた準備期間として

アンビシャス特別助教制度の特徴は、大きな研究成果を出すことよりも、今後のキャリアのための足掛かりを作ることが重要視されている点です。助教としてさまざまなトライができることに魅力を感じ、応募しました。将来はアカデミックポストに就くことを希望しているので、教育に関われることや、異分野の研究者である他の特別助教の先生と交流できることも、キャリアアップにつながる経験になると考えています。私は博士課程の時に「北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」を履修しており、そこでの学びを大学教員として実践に移していく2年間にしたいです。

 

学生時代の学びを後輩たちに還元

今年度、教育の業務で最も力を注いだのは、実行委員長を務めた「DX博士人材フェローシップ 第1回 博士学生のための異分野交流会」です。準備期間が短かった上に、ほぼ白紙の状態から企画を考えたので苦労しましたが、特別講師による講演会、ポスターを使った研究紹介、ワークショップという内容で実施しました。文系、理系問わずさまざまな分野の学生が参加するイベントでしたので、普段研究室や学会でしているような説明の仕方では、異分野の人にはなかなか伝わらないことをまず実感してもらうことが狙いでした。異分野コミュニケーションの第一歩として、学生に良い経験の場を提供できたのではと思います。講義を担当するという形ではなくても、学生をエンカレッジするような活動に来年度以降も関わっていきたいですね。

 

特別助教の間で共同研究を実現したい

イベント運営や交流会、プライベートでの飲み会で、他の特別助教の先生たちと打ち解けることができましたが、本制度で推奨されている共同研究を実現するところまでは今年度は到達できなかったのが少し残念でした。他の先生たちのお話を伺っていると、私の持っている技術でお手伝いできるかもしれないと考えることもあるのですが、それが相手の先生の目的に合っているのか、共同研究としてお互いの成果になりうるのかは、もう少し腹を割って話してみないとわからない。L-Stationの主催で具体的に共同研究のテーマを考えるような研修などを開催していただけたら、特別助教同士のコラボレーションが実現できるのではと期待しています。