特別助教からのメッセージ

~ 安心して研究に専念できる 制度の充実を願って ~

創成研究機構・文学研究院 人文学部門
研究分野: 歴史学(人と動物の関係史)
アンビシャス特別助教 / 2022年度採用
梅木 佳代

非常勤講師の日々を経て感じる制度のありがたみ

2019年9月に博士課程を修了し、他大学の非常勤講師をしながら文学研究院の専門研究員として研究を続けていました。非常勤講師の仕事は経済的にありがたく、教育の経験を積むことができる一方で、研究の時間が削られてしまうのがジレンマでした。特別助教は、研究エフォートが大きいことが何よりの魅力でした。応募資格は「博士号取得後3年以内」ですが、周囲では現役の院生の方が選考を通りやすいのではないかと憶測されていましたね。最終的には、これまでの経歴がアピールポイントになると指導教員に背中を押していただきました。特別助教に採用されたことで、今までにないくらい充実した1年を過ごすことができたので、諦めずに応募して良かったです。


(2022年5月撮影)

 

 

研究者として前進するため2年間をフル活用

私の研究テーマは、明治期にエゾオオカミが絶滅した経緯と実態を解明することです。現在の定説の根拠となっている1930年代の論文を再検討することで、野生動物と人間社会の関わり方を問い直し、現代の生態系保全にも役立てたい。特別助教の1年目に調査と資料収集を行い、2年目に分析して論文を書くというという計画で、次の就職活動までに論文が間に合わないのが残念ではありますが、確実に研究を進められています。さらに、今年は学生時代にまとめきれなかった研究を論文として発表できましたし、文献の情報を地図上の位置と結びつけて分析するための手法も勉強中です。本制度のおかげで金銭的、精神的に余裕ができ、研究者として大きく前進できたと感じています。

 

教育はスローペースでも経験値はアップ

特別助教に着任する時に非常勤講師の仕事から離れたことで、授業の感覚を忘れてしまうのではないかと当初は不安でした。機会があれば授業を持ちたい気持ちもありますが、特別助教には博士課程学生のメンター業務があり、学生との関わりが断たれた訳ではないですし、別の形で今後のキャリアに活かせる経験ができていると思います。業務で特に印象に残っているのは、特別助教の「交流会」で、急に市民参加型の企画を考えるというお題が与えられたことです。全く心の準備をしていなかったので、やり切れるのかと。でも、過去にいろんな企画を実施したことがある方や、お子さんがいる方など、他の先生たちのそれぞれの経験に基づく意見を聞けたのが面白かったです。

 

博士課程の学生支援の先にはセーフティネットも必要

特に文系は、常勤職を得られるまでは無給ポスドクとしてでも走り続けるしかなく、多くの若手が生き残る道を模索していると思います。私自身、図書館に行くための交通費が捻出できなくなるほど経済的に苦しくなり、「どこかで研究を断念せざるを得ない」という思いと、「ここで諦めたくない」という思いの間でもがいていました。特別助教は、博士課程修了後のセーフティネットとなる素晴らしい制度です。少しでも多くの研究者が、安心して研究を続けられる環境が整っていくことを願っています。