生物の持つ機能とナノテクノロジーの融合

研究者 与那嶺 雄介助教

これまで人類は、微生物の優れた変換システムを直接利用して、生活に利用してきました。また、古典的な品種改良を繰り返し、より有用な種を作り出してきました。このアプローチは現在、より体系的・精密な細胞工学として発展しています。例えば、遺伝子変異を導入して、細胞の性質を増強したり、新たな機能を付与することが可能となりました。しかし依然として、有用な変異株を確立するまでには、多大な試行錯誤と労力が必要です。また、人為的操作では変異体の性質を劇的に改変することは難しいといえます。

一方、化学の知見・技術を基にして、人工物で生体の優れたシステムを模倣する「バイオミメティクス」の分野が登場し、合成高分子からなる機能性マテリアルの開発が行われています。このような材料の作製には、有機物・無機物を含め、選択できる素材の自由度が極めて高く、また、化学反応も多彩に揃っています。遺伝子操作による変異株の作製と比較して、短期間に調製でき、網羅的に検討することもできます。しかし、天然の細胞に匹敵するような、高性能な機能性マテリアルを人工的に再現するには至っていないのが現状です。

本研究では、細胞表面に生体機能模倣マテリアルを付加し、細胞が内在的に欠如している変容性を補完して、機能を拡張した「サイボーグ細胞」を創出することを目指します。修飾する人工構造体は、合成高分子に限らず、DNAナノテクノロジーや金属ナノ粒子、MOFなどのボトムアップ技術で構築されたナノ構造体や、フォトリソグラフィーや3Dプリント、MEMSといったトップダウン技術で作製した構造体も選択し得えます。これまで融合が全く考慮されていなかった研究領域を結び合わせ、新規研究分野の開拓を目指します。

与那嶺 雄介
助教Yusuke YONAMINE

分野 生体高分子化学、有機化学
事業
  • 連携(次世代)
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  • 2018年度