化学反応の経路をコンピュータで予測する

研究者 前田 理教授 , 主任研究者, 拠点長

私の研究テーマは、量子化学計算とコンピュータを用いて未知の化学反応経路の自動探索を行う計算法を開発することです。主に開発している計算法は「人工力誘起反応」(AFIR)と呼ばれます。この計算法は、化学反応における反応物同士に人工的な力を加え、ポテンシャルエネルギー曲面上の遷移状態の構造へと導きます。共有結合、水素結合、配位結合、金属間結合、ファンデルワールス相互作用の弱い結合など、あらゆる種類の結合組み換えを伴う化学反応を、人工力をかけるだけ、という単純操作の繰り返しによってすべて予測できることがAFIR法の特徴です。また、立体配座の変化や有機金属錯体の擬回転、そして異なる電子状態間の非断熱遷移経路を見出すこともできます。人工力をかける操作を何度も繰り返すことにより、反応経路ネットワーク全体を明らかにすることができます。これにより、反応メカニズム全体がわかり、未知の化学反応を調べることができます。

新しい化学反応を効果的に見出すためには、実験化学者の発想と彼らによる検証が必要です。と同時に、AFIR法は大量のデータを発生させるため、そのデータをいかに処理するかが大きな問題となっています。 そこで、ICReDDでは実験科学者、情報科学者、および、計算科学者が協力することにより、化学反応を予測するために真に有用な方法の開発を目指しています。

前田 理
教授 , 主任研究者, 拠点長Satoshi MAEDA

キーワード 遷移状態, 反応経路探索, 反応速度論
分野 理論化学, 計算化学
事業
  • 2011年度