研究概要
かつて北海道に生息したエゾオオカミは明治時代に絶滅しました。エゾオオカミは、近代的な畜産業の導入と進展にともなって家畜を襲う「害獣」とみなされるようになり、駆除制度の対象とされた結果として絶滅しました。しかし、エゾオオカミの絶滅からおよそ130年が経過した現在でも、北海道のどこで、どれだけの家畜がオオカミによる被害を受けたのか、また、当時の人々がどのようにしてそうした被害を防ごうとしていたのか、人とオオカミの関わりや軋轢の全体像はほとんど明らかになっていません。
エゾオオカミの絶滅は、日本列島内で人が意図的に野生動物を絶滅させた最初の事例として知られ、その実態を把握することは、日本人と野生動物の関わりの歴史を理解するために重要といえます。私の研究は、文献上の記録から過去の北海道における人とオオカミの関係性を分析し、両者が共存を果たすためには何が必要だったのかを明らかにしようとするものです。