研究概要
近年の,新型コロナウイルスによるパンデミックのように,ウイルスが引き起こす感染症は,長年に渡り人類の脅威となっています。中でも重篤な中枢神経疾患を引き起こす狂犬病ウイルスは,古来より強毒性ウイルスモデルとして着目されてきたウイルスの一つであり,発症後の治療法が存在せず,致死率が100%の強毒性を持つことから,150ヵ国に渡り年間5万9千人の死者が存在します。狂犬病ウイルスが強毒性を持つ要因の一つに,ウイルス遺伝子にコードされたP蛋白質が,ヒト(宿主)細胞内で免疫制御の中心を担う分子であるSTATを阻害する”免疫逃避”機構が挙げられます。
私は,生化学的手法および構造生物学的手法を用いて,P蛋白質によるSTAT阻害の分子機構を明らかにすることで,ウイルスがどの宿主に対し強毒性を示すのか(ウイルスの宿主指向性)の解明および,抗ウイルス薬やワクチン開発に必要な分子基盤情報の提供を目指しています。