アンビシャステニュアトラック教員の真栄城 正寿 准教授らの研究グループが、研究成果を発表しました

2023年3月1日
  • プレスリリース

ポイント

●手のひらサイズのマイクロ流体デバイスを用いた、核酸搭載脂質ナノ粒子の大量製造方法を開発。
●開発したマイクロ流体デバイスが、mRNAワクチンと同様の脂質ナノ粒子を製造できることを実証。
●mRNAワクチン製造への応用や遺伝子治療及び個別化医療への応用に期待。

概要

工学研究院の真栄城正寿准教授、渡慶次学教授、同大学院総合化学院修士課程(当時)の岡田悠斗氏、信越化学工業株式会社の安藤雅郎氏、山崎裕之氏、竹内正樹氏らの研究グループは、手のひらサイズのマイクロ流体デバイスを用いて、mRNAワクチンに用いられている脂質ナノ粒子(LNP)を大量に製造する方法を開発しました。

核酸を搭載したLNPは、COVID-19に対するmRNAワクチンにも利用されており、今後は様々な感染症やがんワクチンなどに応用が広がると期待されています。一方でLNPの粒径は、体内動態や薬効などに影響します。そのため、LNPの粒径を精密に制御する技術が求められていました。

近年、マイクロ流体デバイスを用いたLNP作製法が世界的に注目されています。LNPは、脂質原料溶液と核酸原料溶液を迅速に混合することで作製されます。マイクロ流体デバイスは、従来の作製法と比較してLNPの粒径を精密に制御することが可能です。しかし、マイクロ流体デバイスを用いたLNP作製法は、一度に調製できる粒子量が少なく、LNPの生産量に課題がありました。

研究グループは、北大独自のマイクロ流体デバイスである「iLiNP®」を基に、マイクロ流路を積層化したガラス製マイクロ流体デバイスを開発しました。さらに積層化したマイクロ流体デバイスを並列化することで、従来のiLiNPデバイスの約50倍のLNP生産量を達成しました。また、開発したマイクロ流体デバイスが、COVID-19用のmRNAワクチンComirnaty®及びSpikevax®製造に応用できることを実証しました。

今後、感染症用ワクチンだけでなく、個別化医療の実現に向けたナノ医薬品開発への応用が期待されます。

なお、本研究成果は、2023年2月16日(木)、Applied Materials Today誌にオンライン掲載されました。

論文名:Mass production system for RNA-loaded lipid nanoparticles using piling up microfluidic devices(積層型マイクロ流体デバイスを用いたRNA搭載脂質ナノ粒子大量生産システム)
URL:https://doi.org/10.1016/j.apmt.2023.101754

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