アンビシャステニュアトラック教員の樋浦 諭志 准教授らの研究グループが、研究成果を発表しました

2023年3月1日
  • プレスリリース

ポイント

●実用光半導体を用いて、室温かつ高電圧下でスピン発光ダイオード(LED)の高性能動作を達成。
●高電界により電子スピンの輸送中に急速に失われてしまうスピン偏極情報を光学活性層内で復元。
●スピン偏極を高める希薄窒化物半導体の高い実用性を実証し、今後の光スピン素子の開発を加速。

概要

大学院情報科学研究院の樋浦諭志准教授、同大学大学院情報科学院博士後期課程の江藤亘平氏らの研究グループは、超高速動作に必要な高電圧下で高効率に動作するスピン発光ダイオード(LED)を開発しました。

スピンLEDは、電子スピンによる超低消費電力の情報記憶と、光によるスピン情報の高速伝送を実現する新しい光電変換素子であり、次世代の省エネルギー情報基盤を構築するために必要不可欠です。スピンLEDの超高速動作を実現するには高電圧下での動作が必須ですが、室温かつ高電界下では電子のスピン偏極情報が急速に失われるため、高い性能がこれまで実現していませんでした。

今回、研究グループは、超低消費電力のレーザー材料として実用化されているインジウムガリウムヒ素(InGaAs)量子ドットと、室温でスピンフィルタリング増幅が働く希薄窒化GaAs(GaNAs)量子井戸から成る、量子力学的トンネル結合ナノ構造を活性層に用いたスピンLEDを開発しました。高電圧下では電子のスピン偏極は活性層への注入前に電界によるスピン緩和が生じて低下してしまいます。しかし、本研究では活性層への注入後にGaNAsのスピン増幅効果が働くことで量子ドットにおける電子のスピン偏極が高まり、高電圧下でも高い性能を実現できることを明らかにしました。

本研究成果は、スピン偏極を高めるGaNAsのスピンデバイスへの高い応用性を実証するとともに、超低消費電力の光スピン配線の実現に向けたスピンLEDの開発が加速することが期待されます。

なお、本研究成果は、2023年2月22日(水)公開のPhysical Review Applied誌にオンライン掲載されました。

論文名:Efficient Room-Temperature Operation of a Quantum Dot Spin-Polarized Light-Emitting Diode under High-Bias Conditions(高バイアス条件での量子ドットスピン偏極発光ダイオードの高効率な室温動作)
URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.19.024055

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