ポイント
●ハイエントロピー金属テルライドは高圧下で超伝導転移温度が変化しない特異な性質を示す。
●放射光 X 線回折によってハイエントロピー金属テルライドの局所構造乱れを実験的に確認。
●MD シミュレーションおよび第一原理計算から、ハイエントロピー金属テルライドにおけるガラスで見られるような原子振動特性とぼやけた電子状態の発現を解明。
概要
東京都立大学大学院理学研究科の水口佳一准教授、栗田玲教授、島根大学総合理工学部の臼井秀知助教、東京大学生産技術研究所の高江恭平特任講師、工学研究院の三浦章准教授、広島大学先進理工系科学研究科の森吉千佳子教授らの研究グループは、超伝導体や熱電材料として注目されているハイエントロピー型金属テルライドの局所構造乱れ、原子振動特性、電子状態を解明しました。
ハイエントロピー型金属テルライドは高い熱電性能を示すことや、高圧下で特異な超伝導特性が発現する新機能性材料です。ハイエントロピー化合物では、原子サイトに異なる元素が多数固溶するため、局所的な構造乱れの導入が想定されますが、乱れによる原子振動や電子状態の変調は明らかになっていませんでした。
同グループは、放射光 X線回折によってハイエントロピー金属テルライドにおける局所構造乱れを実験的に確認し、また MD シミュレーションと第一原理計算から、ガラスに近い原子振動特性とぼやけた電子状態が発現していることを明らかにしました。
本研究成果は、ハイエントロピー超伝導体の新物質開発や特性の理解を促進し、また熱電材料を含めた様々なハイエントロピー機能性材料の開発に有用な指針を与えるものです。
本成果は Elsevier の英語論文誌「Materials Today Physics」に 2023 年 2 月 15 日に掲載されました。
論文名:Glassy atomic vibrations and blurry electronic structures created by local structural disorders in high-entropy metal telluride superconductors
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