ポイント
●複数の立体配座の安定化に成功し、結晶中の分子構造に応じた色調/発光を示すことを解明。
●わずか5種類の溶媒の組み合わせで分子構造や色が異なる9種の結晶を与えることを発見。
●同一分子であるにもかかわらず多彩な色変化を示すため、新たなクロミック材料として期待。
概要
理学研究院の石垣侑祐准教授及び菅原一真博士研究員、九州大学大学院工学研究院の小野利和准教授らの研究グループは、極めて柔軟で複数の構造を発現可能なキノジメタン型分子を合成し、結晶中の分子構造により結晶の色調や発光が劇的に変化することを明らかにしました。
炭素=炭素(C=C)二重結合は通常平面構造を示しますが、大きな置換基を周囲に導入することで折れ曲がり構造やねじれ構造といった複数の構造をとる場合があります。これらの分子構造によって物性(色調や発光特性)が変化することが知られていますが、複数の構造を取り出し評価することは通常困難です。これは、溶液中ではどちらかの状態、あるいは平均化された状態の物性を観測することになるためです。また、分子運動がほとんど起こらない結晶中でも、通常は安定構造のみが観測され、二種類の構造を発現させることに成功した例はごくわずかでした。
研究グループは、C=C二重結合周りの構造変化が自由に起こるような分子を設計することで、様々な分子構造とそれに基づく物性を取り出すことが可能と考え、柔軟なキノジメタン誘導体を設計、合成しました。その結果、結晶化の溶媒を変えることで、結晶中の分子構造が大きく異なることを見出し、それにより結晶の色調や発光特性が多彩に変化することを明らかにしました。これらの色調変化は構造に由来するため、結晶の色から分子構造を推測することにも繋がると期待されます。
なお、本研究成果は、2023年2月8日(水)公開のMaterials Chemistry Frontiers誌にオンライン掲載されました。
論文名:Exceptionally Flexible Quinodimethanes with Multiple Conformations: PolymorphDependent Colour Tone and Emission of Crystals(複数の構造をとる極めて柔軟なキノジメタン誘導体:結晶擬多形による結晶の色調/発光変化)
URL:https://doi.org/10.1039/d2qm01199a
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